その先へ

第8歩

《ジュンは好きな人いるの?》

《私はいるよ》


集中なんて出来るはずがなかった。

カノンの言葉が頭から離れない。


案の定、監督の目に留まった僕はマンツーマンで徹底的に指導された。

指導というよりシゴキといった方が正しいのかもしれない。

そんなシゴキに対しても何一つ動じず、ただただ上の空だった。


「何だお前!?やる気あんのか!?」


怒った監督は僕の竹刀を力一杯叩いた。竹刀は手から抜け激しく地面に落ちる。

もしこれが試合ならば反則もので、そんな僕の行動で監督の雷が落ちないはずがない。

胴を掴まれたと思ったら壁際まで勢い良く投げられた。


「もういいわ!!お前なんか終わるまで正座してろ!!」


そう言い放つと他の生徒を指導しに行ってしまった。

僕は倒れた体を起こし正座をする。


シゴかれるのも、
監督に怒られることも、
正座させられるのも、

普段なら苦痛で堪らないはずなのに。

それぐらい僕はカノンのことでいっぱいいっぱいだったのだ。
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