その先へ
《…進路…》


考えたことなかった。いや、正確には考えないようにしていた。

今の自分でいっぱいいっぱいで将来の自分なんてずっと遠くに感じている。

未来を想像すればするほど虚しさしかない。


僕が答えずにいると、ユーヘイは意外な顔をして、


「もしかして…まだ決まってねーの?」


と聞いてきた。


「みっ…みんなはもう決まってるの?」


僕は誤魔化すように尋ねた。



「俺は実家の大工を継ぐ予定で。フミナは…」


「私は看護師になるために看護学校行くつもり。カンちゃんは…」


「アタシは専門!!カリスマヘアーメイクアーティストになるの!!タキって何だった?医者?」


「さっき話したばっかだろ?そして勝手にハードル上げるな。俺はとりあえず大学行くつもり」


「私は…音大に行って音楽をもっと学びたい」



驚いた。みんな行きたい道が決まっている。

ただ馬鹿みたいに騒いで、今が楽しければそれでいい、そう思っているものだと思っていた。

こういう話だって今までに一度もなかったのに…。

何だか僕だけ取り残された感覚さえ覚えた。
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