その先へ
「でも、ビックリした。ジュンも感情的になることがあるんだね」

「え!?」

「さっきカノンに怒鳴ったでしょ?ジュンも人間なんだなって…」

「おいおい…。何だよそれ…」

「ごめんごめん。でも、私から見たジュンって謎なんだもん。何考えてるか分からないし、何も言わないし…。ねぇ!!私たちがこうして話すのって初めてよね?」


そう言われて気付かされた僕。確かにフミナと2人きりで話すのは初めてだ。2人で遊んだことはないし、フミナと話す時は他に誰かしらがいる。
僕がそんなことを考えてるとフミナが続けて話し出す。


「ジュンは謎だけど優しいよね。みんなの嫌がることも率先してやるし」

「そんなことないよ。フミナの方がすごいじゃん。みんなをまとめることは自分には出来ないし」

「そんなことないって!!ジュンはさっきみたいに嫌なことは嫌って言っていいんだからね!!」


そう言うと彼女はニコッと笑った。
そんな彼女の笑顔に、自己嫌悪に陥っていた僕は何だか救われた気持ちになった。彼女と話しているとアイ姉と話してるような安心感がある。


「ジュン。たまにはこうして2人で話さない?ユーヘイとかカンちゃんだと真面目な話出来ないんだもん」


半分呆れたように笑うフミナに僕も思わず笑ってしまった。


「そりゃそうだな。あの2人じゃなぁ…」


その後もフミナとは今まで話せなかった時間を補うように色々な話をした。しかし、自分自身の話や家庭の話など僕が聞かれたくないことはフミナは何も尋ねて来なかった。

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