その先へ
「あっジュン。武道場からすごい勢いで人が出て行ったのが見えたから焦って部室から出て来たのに…」


すぐさま後輩たちのダッシュぶりが想像出来た。


よく見るとカノンは少し息を切らしていた。僕を待たせないように急いで来てくれたのだろうか。


「ジュンがマイペースで良かった」


そう言うとカノンはニコッと笑った。
遅れて来た僕を責めるのでなく、自分が僕を待たせなかったことにホッとしている。
そんな彼女の優しさに触れ、自分自身の行動に後悔した。


「ごめん」


その一言しか出て来なかった僕に、


「何謝ってんの?それより早く行こうよ」


そう言って歩き出す彼女が僕には眩しかった。




下駄箱で上履きに履き替えていると、


「これで3年間同じクラスだね」


またニコッとした顔で僕に話掛けてくるカノン。

「まっ…またカノンと一緒かぁ」

「何?嫌なの?」


想いとは裏腹に出た言葉で案の定笑顔を一気に曇らせてしまう。


僕が感じている同じクラスでいられる幸せは、きっと彼女の想像を遥かに越えているだろう。伝えられないもどかしさが身に染みる。



「俺も3年間同じなんだけど」


声が聞こえたと同時に僕の視界からカノンが消えた。いや、正確には後ろから来た何かに目の前を遮られた。

僕はすぐさま後ろを振り向いた。
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