その先へ
「好きな人、教えてくれなかったじゃん?カノンを見てたら誰を好きかぐらい分かるよ。ただ、カノンの口から聞きたかった」

「え!?バレてるの!?」


カノンはこの上なく驚いていた。彼女が驚いた意味に気付かない僕は、


「カノンのことなら分かるよ。水くさいじゃん」

「だって…言えないよ…恥ずかしいんだもん…」

「自分はお似合いだと思うよ、応援してる」

「えっ…!?」


彼女は再び驚いた様子を見せた。しかし、先ほどとは違った驚き方だった。またしても僕が気付くことはなかった。


「お似合いって…ジュンは誰のこと言ってるの?」


僕は彼女への気持ちを押し殺そう…いや、打ち消すぐらいの想いで、


「誰って…ユーヘイに決まってるじゃん!!」


と、明るく言った。


カノンに対しての想いを消して、僕は彼女と友達でいる決意をした。

何が何でも彼女のそばにいたい。
たとえ自分がいくら苦しいとしても。

しかし、さすがに<ユーヘイ>の名前を出した瞬間、こみ上げるものを抑えるのに必死だった。今日はこれ以上話し合うのは無理だと思った。

電話を切ろうとカノンに話し掛けようとしたその時、


「何言ってるの…!?」


カノンのか細い声が耳に入ってきた。
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