君想い。


ザーッと雨が降る音がして雨の匂いが鼻をかすめる。


折り畳み傘を片手に靴箱に向かうと見慣れた男の後ろ姿が見えた。


「…雨かよ」


どうやら雨に降られてお困りな様子だった。


「みーやーとっ!何してんの?」


そう言って話しかけると雅人は振り返った。


「…紗季か」


少し寂しげな顔をした雅人に違和感を覚えた。


だけど気づかないフリしてやった。


「もしかして傘ないとか?」


「まぁ、そんなとこ」


これはチャンスかもしれない。


不謹慎ながらにそう思った。

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