君想い。


最後の一粒が落ちた後、雨はふっと止んだ。


「雨、止んだな」


「うん」


雅人は傘を拾って閉じてくれた。


「俺…さ」


「うん」


「まだ智香が好きだけど、今度こそ諦める」


やけにすっきりした雅人の顔が眩しい。


なんだかずるく感じてあたしは意地悪したい気分になった。


「そっか。…じゃあ次はあたしを好きになってよ」


あたしがそう言うと雅人は目を丸くした後、ニヤリと笑った。


「…たく、油断も隙もねぇな、お前は」


「でしょ?」


「お前には敵わねぇわ。…マジで惚れそう」


「…なっ?!」


雅人が不意にそんなこと言うからあたしは思わず顔を赤くした。


「ばーか。冗談だよ」


意地悪げに笑う雅人の頬にキスしてやった。


【完】
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