君想い。


智香のことを考える度、昔の俺が責めてくる。


“俺は智香が大好きだ。愛してる”


俺だってそうだ。


あの笑顔も、あの優しさも、あの感触も、あの匂いも、あの体温も。


智香の全部が好きなんだ。


今だって誰にだって負けないくらい智香を想っている。


“じゃあ、なんで。なんであの時、智香を手放してしまったんだ?”

一時の気迷いだったんだ。


“そんなの言い訳に過ぎないだろ。手放したのはお前のせいだ。違うか?”


いつもそう言われたところで言葉に詰まる。


“お前は馬鹿だ”


いつもそう言って、昔の俺は消えるんだ。

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