偽者お姫様
「さっきから主 主って・・・・・、僕は君の主ではないよ」
この少女は彼を誰かと勘違いしているのだろうと、ウィズは思っていた。
そんな彼に、 あなたは何を言っているの とでも言うかのような表情で、少女は口を開ける。
「私の新しい主は、あなた様です。 私は、あなた様に拾われたのですから」
「いや、別に拾ったわけじゃ・・・・。 ただ君が血だらけだったから、此処に連れてきた訳で・・・」
その言葉に、彼女はハッと何かに気付き、
「手当をして頂き、ありがとうございます。 ご主人様にそのような事をさせるのは許されない事であるのに・・・・。 本当に、申し訳ございません」
震えた声で、彼に頭を下げながら そう言う。
尋常ではない彼女の言葉に、ウィズの頭は混乱するばかり。
必死に、そして何かに怯えるかのように、彼に詫びる少女の姿に、魔法使いは驚くを通り越して、焦りすら感じる。
「そ、そんなに謝らないでおくれ。 ただ手当をしただけだよ。 ほら、顔をあげて」
その言葉に、少女は躊躇いながらも、顔を上げた。
「・・・・・っ、」
その何かに対しての不安そうな、彼女の表情が シンデレラと重なる。
すぐに目を逸らし、 重ねてはいけない、と何度も何度も、ウィズは己に言い聞かせた。