偽者お姫様
「どこか痛むのかい」
優しく、ウィズは彼女の涙を拭う。
小さく彼女は首を横に振った。
「名前が気に入らなかったとか?」
「ち、違いますっ。 嬉しくて……」
決して、過去を思い出して、とは言えない。
けれど嬉しいということも、嘘なんかじゃ、ない。
「魔法使いとは、優しい方なのですね」
( ……ごめんよ )
あの魔法使いも、私たち奴隷のために心を痛めてくれた、優しい人だった。
「…………」
黙りこんだウィズに、リオルは首をかしげる。
「…僕ら魔法使いなんて、存在するべきものじゃない」
それは彼女に言ったのではなく、一人ごとのようだった。