偽者お姫様



リオルだけになった家の中は、とても静かだった。

彼女は両目を手で隠す。


「……殺してよ」

ぽつりと呟いた。

「一人は辛いの」

込み上げてくる涙は静かに流れ落ち、シーツを濡らした。


( ……シンデレラ )

彼の心に、その女性が留まっているのなら、彼もきっと私を利用する。

( お前は本当に役に立つ奴隷だ、S-02 )

「あの特技さえなければ、私も今頃は死んでいるのに……!」


ギリ、と唇を強く噛み締めた。
口の中で鉄の味が広がる。それでも、強く噛み締めた。



< 27 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop