偽者お姫様
「……ウィズ様」
「“様”もいらないよ」
今度はリオルが少し顔をしかめた。
「様付けは、絶対ですので」
「そんなこと、誰が決めたんだい」
主のことを様付けするのは、奴隷として当たり前のこと。
言葉づかいだって、そうなのに。
主の機嫌を損ねてはいけないし、どんな命令だって従わないといけない。
それが、奴隷としての役目であるのに。
「………」
どうしよう。
様を付けないなんて、奴隷として許されない。
でも、主の命令は絶対……。
「リオル?」
その声は、彼女の耳に届いていなかった。
それほど懊悩しているということなのだろう。
奴隷から少しでも解放してあげようと思っているのに、それなのに何故彼女は引き下がろうとしないのだろうか。
奴隷という名から解放される事こそ、彼女(奴隷)の望みであるはずなのに。
ウィズはその思いでいっぱいだった。