偽者お姫様
♯ 2
一粒、また一粒と、 空から雨が降り落ちてくる。
「はぁ、濡れたくなかったのに」
誰ひとり居ない、もの寂しい道を、一匹の黒猫が 歩いていた。
彼の家は 町から離れた丘に、ひっそりとたっている。
滅多に人々は通らず、そこは本当に 静かな所だった。
( ただいま、シンデレラ )
幸せそうな、二人の姿。
それが 羨ましくて、寂しかった。
( 僕達は、似た者同士だね )
幼い頃に彼と出会い、そして長い間 魔法使いは黒猫の姿で、彼と一緒に居た。
人間を厭い、歪んだ王子。
人間を恐れ、歪んだ魔法使い。
彼等の周りには 誰もいなかった。
まだ脆かった心が孤独に押しつぶされてしまわないように、一人と一匹は離れなかった。