偽者お姫様
貴族たちは、ざわざわと騒いでいる。
「私(わたくし)たちですって?」
「何を言っているの、あの娘は」
「我々なわけないだろう」
次々と、そんな言葉が聞こえてきた。
「あなた達が魔法使いに願ったのは、お金や宝石、そんなクダラナイ物でしょう」
「クダラナイ物だと? 貴族でもない庶民の君には、その価値なんて分からないさ」
貴族たちは、リオルを鼻で笑った。
「価値を分かっていないのは、あなた方です」
「なっ…!」
「魔法使いは、人々が心の底から叶えてほしいという、その切実たる願いを、叶える存在。 お金や宝石なんて、自分で手に入れる事が出来る物。 なのにあなた方貴族は楽をしてソレを手に入れようとした」
( 魔法使いさん、どうか、どうか願いを叶えてください )
僕がこの街に来たとき、悲しそうな、辛そうな、そんな表情をした人々が、僕を頼って来た。
( ありがとう。ありがとう、魔法使い )
嬉しそうにそう言ってくれるのが、僕は本当に嬉しかったんだ。
人助けが出来るこの魔法使いという存在が、そのときは誇らしかった。