偽者お姫様




広い庭園にはたくさんの花が美しく咲き誇り、緩やかな風と共に揺れている。
そんな風景をシンデレラは飽きること眺めており、
少し離れたところにあるテーブルの所では、クロードが紅茶を飲んでいた。

そんな和やかな雰囲気の中、ふと木からガサガサと物音がする。

不思議そうに、シンデレラはその木へ近寄った。

「ウィズさん?」

木の枝にいたのは、息を切らしている黒猫。
地へと飛び降りた彼は、なおも息を切らしていた。

「ウィズ、どうしたんだい?」

いつもとは明らかに様子が違う。
幼い頃に彼と出会ったが、これほど何かに動揺している姿を見たのは、初めてだった。

「僕は、一体どうすれば……」

人間の姿に戻ることすら忘れ、ウィズはそう呟いた。


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