偽者お姫様



「何があったんですか?」

心配そうに、シンデレラは声をかける。

「庶民の人々は僕がまた姿を現すのを待っているんだ。……けれど、僕は……」


シンデレラは、何も返せなかった。
ウィズの過去を深く知らない彼女は、彼を励ますことが出来ない。


「クロード様……」

人の過去に勝手に干渉してはいけない。そう思った彼女は、ウィズのことをよく知っている彼に任せることにした。

クロードはそれを悟り、こくりと頷く。

「ウィズ、中へ入ろう。僕の部屋であれば、誰も入らないし、安心出来るだろう。そこで話を聞くから」

そう言って、未だ動揺しているその黒猫を抱き上げる。

「シンデレラ、君は此処にいておくれ」

はい、と彼女は答える。

そしてクロードは、ウィズを連れて中へと入って行った。


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