偽者お姫様
欲塗れな人々に失望した、幼き王子。
いっそこんな世界から逃げ出してしまいたいと、強く願っては、お城を飛び出した。
ただ宛もなく歩き続け、気付けば静かな森の中。
木漏れ日に照らされるその場所は、本当に静かで、まるで時が止まっているかのようだった。
そして、
( どうしたの? )
自分とさほど歳が変わらない漆黒の髪をもった少年が、太い幹に背を預けながら、蹲っていた。
向けられたのは、希望を失った、紅い瞳。
あぁ、この子も僕と同じなんだ。
彼はすぐに、そう思った。
( 僕のせいで、みんなが…… )
人々の欲望に苦しむ、幼き魔法使い。
( 人間は穢れていて、欲深い生き物だよ。 君のせいなんかじゃないさ )
何も意味など込められていない笑みを見せ、王子は、手を差し伸べた。
( 僕たちは、似た者同士だね )
もうこれで、僕はひとりじゃない。