偽者お姫様
そして 心は傷つく
♯ 1
先ほどまで晴れて空が、分厚い雲に覆われていく。
ぽつりぽつりと冷たい雨が降り落ち、瞬く間にそれは強さを増した。
立派なお城の門前で、眼帯をしている少女がただ一人、雨のなか無情に立っていた。
警備の二人はもう彼女のことを気にしていない。
髪から滴る雨粒が頬を伝い、幾度となく零れ落ちる。
雨のせいで体温が奪われていく。指先は、すでに冷たい。
あぁ、けれどこんなの全く辛くない。
あの国に比べたら……マシだもの。
そんな事を思っていたとき、ふと門が開く。
「大丈夫ですか?」
それは優しい、柔らかい声。
俯いていた顔を、リオルはゆっくりと上げる。
そして少し、目を見開いた。
ハニーブラウンの髪に、牡丹色の瞳。
髪と瞳の色は違えど、気付いてしまった。
どことなく、自分と彼女は似ている、と。