偽者お姫様
「ではお姫様、私(わたくし)はタオルと着替えをお持ちしますね」
パンパンをそのメイドが手を叩けば、もう一人のメイドがやって来る。
「シンデレラ様とリオル様を客室へ。湯殿の準備もお願いね」
「畏まりました。では、こちらへ」
「行きましょう、リオルさん」
再び、彼女に軽く腕をひかれる。
「……どうして、見ず知らずの他人に優しいんですか」
思わず、言葉が零れた。
え? とシンデレラは少し驚いた顔をする。
「…すみません、今のは気にしないでください」
ふい、とリオルは彼女から視線を逸らす。
今まで自分のことで精一杯だった環境で育った少女は、他人に対して興味を持たない。
正確にいうと、持つ余裕がなかったせいで、持たないようになってしまった。
そんな彼女が全く知らない他人に優しくするなど、まずあり得ない。
だから余計、リオルにとってシンデレラは不思議で仕方がなかった。