偽者お姫様
「―――!」
向こうから微かに聞こえてくる足音に、ウィズは我に返る。
この足音は、人間。
けれどとても 弱弱しい。
どうする、隠れるか?
いや、でもここは普通に“野良猫”を装って・・・・。
そんな事を考えているうちに、その人物は、姿を現した。
「――――シンデレ、ラ?」
喋ってはいけないのに、彼は言葉を 抑えきれなかった。
目の前に居る その少女は、体中にすり傷があり、そしてところどころ 深い傷を負っている。
決して綺麗とは言えない、灰色のローブはボロボロで、血が滲んでいた。
そして少女は かつて己が想いを寄せた彼女に―――シンデレラに、似ていた。
息切れをしている彼女は、一瞬 黒猫と視線を絡ませては、力なく その場に倒れ落ちる。
彼女の血が じわじわと、地面へ広がっていった。