偽者お姫様
三人のいる部屋の扉が開かれる。
けれどシンデレラもリオルも、それに気づかなかった。
「……本当に、この国の奴隷制度は緩いのね」
俯いたリオルの口から、ぽつりと呟かれた。
シンデレラは黙ったまま、悲しそうな表情をする。
リオルは顔を上げる。
冷たい眼差しを、彼女に向けて、意味深に微笑んだ。
「―――あなたは、幸せな奴隷だわ。奴隷である悲しみも、憎しみも、虚しさも、どうせ何も知らない」
刹那、乾いた音が室内に小さく響いた。
「リオル、訂正するんだ!」
叫んだのは、ウィズ。
彼女はぶたれた頬に触れながら、俯いている。
「シンデレラの過去を、何も知らないのに――!」
はじめて見る魔法使いの怒りを露にしたその姿に、シンデレラは目を見開いていた。
「シンデレラ、彼女の言葉は気にしないでおくれ。さあ、部屋へ」
そう言って、彼はシンデレラの腕を引いて、その部屋から出て行く。
リオルから離れさせたかったのだろう。
静寂さが、部屋を包みこんだ。