偽者お姫様
「お、おい!」
猫の姿である事すら忘れ、慌ててウィズはその少女の元へかけよる。
体は氷のように冷たく、彼女の呼吸も、虫の息だった。
ただ生ぬるい血だけが次々と溢れ続け、黒猫の足にも その血はべっとりとついている。
「このままでは、死んでしまう―――」
刹那 彼は人の姿へ戻り、そしてその弱り切った少女を抱え、走り出す。
彼女はあまりにも軽すぎて、少しでも力を込めてしまえば いとも簡単に壊れてしまいそうだった。
その小柄な身体から、止まる事なく 赤い滴が落ちて行く。
家に着いてからは、少女の傷の手当てをする事に 必死だった。
暖炉に火をつけ 冷え切った体を少しでも暖かくし、浅い傷は魔法で直し、そして血でそまった服を着替えさせ、こびりついた血を 拭き取る。
どれほどの時間が経ったかは分からないが、彼女は先ほどとは打って変わり、今は安らかに眠っている。
ウィズは安堵の胸をなでおろし、そしてジッ と、少女を見つめる。