偽者お姫様
「すみませんでした、クロード様。彼女に、ひどいことを言ってしまい」
俯いたまま、リオルは口を開ける。
「君でなければ、ウィズではなく僕の方が先に手を出していただろう。けれど君は北の国の奴隷……この国との奴隷の違いに思うことは多くあるに違いない」
「……優しいお方ですね。 ……私は、きっとシンデレラ様が羨ましかったのでしょう。同じ奴隷でありながら、救われて、幸せそうで――」
北の国では、決してありえないことだから。
だからこそ羨ましくて、そしてそれが、憎かった。
リオルの瞳から、涙が零れ落ちる。
( シンデレラの過去を、何も知らないくせに――! )
主を、怒らせてしまった。
そんな私は、もう必要のない存在。
小さく、彼女は微笑みを浮かべる。
――私もようやく、みんなのところへ行けるのね。
( お前だけは生き延びろ、デイジー )
「……ごめんね、サイ」
ぽつりと彼女は呟く。
そしてクロードの方に顔を向け、一礼し、リオルは部屋を後にした。