偽者お姫様



一体彼は、どんな風に私を殺すのだろう。


しとしとと降る雨の中、彼女は一人、街中歩き続ける。
誰もいない街中は、とても寂しげだった。


「一旦北に戻るぞ!」

少し後ろの方から聞こえたその声に、心臓が大きく脈打つ。
咄嗟に、近くの細い路地へと入り込み、身を隠す。

「いくらお気に入りのS-02だからといっても、どうせ殺されるだろうな」

「脱走を試みた奴隷には死を。 当たり前なことだろうが」


二人の男が通りすぎていくのを、必死に息を殺しながら隠れ続ける。
彼らが去ってからも、しばらく彼女はそこを動くことが出来なかった。


――どうせ殺されるのならば、ウィズ様に殺されるほうがいい。


胸のうちで呟き、ゆっくりと立ち上がり、顔を上げる。
雨が頬を伝い、零れ落ちていく中で、何故か涙も共に零れだす。

シンデレラへの羨ましさと、ようやく殺される嬉しさと、自分を守るために犠牲になった二人への、罪悪感。

それとともに幼いころの懐かしい思い出と、奴隷となった忌々しい思い出もまた、蘇ってくる。


様々な思いが入り混じり、結局どうして涙が出るのかも、リオルはわからなかった。


< 71 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop