偽者お姫様
一体彼は、どんな風に私を殺すのだろう。
しとしとと降る雨の中、彼女は一人、街中歩き続ける。
誰もいない街中は、とても寂しげだった。
「一旦北に戻るぞ!」
少し後ろの方から聞こえたその声に、心臓が大きく脈打つ。
咄嗟に、近くの細い路地へと入り込み、身を隠す。
「いくらお気に入りのS-02だからといっても、どうせ殺されるだろうな」
「脱走を試みた奴隷には死を。 当たり前なことだろうが」
二人の男が通りすぎていくのを、必死に息を殺しながら隠れ続ける。
彼らが去ってからも、しばらく彼女はそこを動くことが出来なかった。
――どうせ殺されるのならば、ウィズ様に殺されるほうがいい。
胸のうちで呟き、ゆっくりと立ち上がり、顔を上げる。
雨が頬を伝い、零れ落ちていく中で、何故か涙も共に零れだす。
シンデレラへの羨ましさと、ようやく殺される嬉しさと、自分を守るために犠牲になった二人への、罪悪感。
それとともに幼いころの懐かしい思い出と、奴隷となった忌々しい思い出もまた、蘇ってくる。
様々な思いが入り混じり、結局どうして涙が出るのかも、リオルはわからなかった。