偽者お姫様
「けれどある日突然、エルシーは体調を崩し、そのまま、息を引き取ってしまいました」
いつも暖かかったその手は冷たくて、その現実を受け入れたくなくて、4人で泣き叫んだけれど、温もりが戻ってくることは、なかった。
「彼女を失い、子供だけになった私たちのところへ、男がやって来て……そして私たちは市場に連れて行かれ、檻に入れられました」
( いや! やめて! )
熱い熱い鉄の塊を、まだ幼さのある顔に、その白い頬に押し付けて、彼は笑う。
幼い私たちは、どうすることもできなかった。
「S-01、02、03、04。それが私たちの奴隷の番号となり、そして名前となりました」
リオルは唇をかみ締める。
「エルシーから貰った名前を奪われ、存在価値のないものとなったけれど、それでも生きようと思えたのは、奴隷として売られた場所が、四人とも一緒だったからです」
ペンダントを二つ、手の上に乗せる。
「それは?」
「……エルシーがまだ元気だった頃に、彼女が一人ずつにくれたものです」
二つのペンダントにはそれぞれ青を放つソーダライトの石と、飴色をしたヘリオドールの石が埋め込まれている。
「一人一人に似合った石を、彼女が埋め込んだんです」
――太陽の贈り物。
彼女は確かにそう言ってくれた。
その意味は、私に似合うと。
けれど。
私はそんな輝かしい者でもなんでもない。
私のせいで、私を庇おうとしたせいで、二人は死んでしまったのだから。