サヨナラのその日までそばにいさせて。
「咲希は何も知らずにいなくなられた方が嫌だと思うぞ?」
「好きにならんかったら、こんな苦しい思いしんかったのにな…」
手で目元を覆うとアキは俯いた。
部屋にはアキの涙を堪える声が響いた。
震えるアキの背中をさすり、泣き止むのを待つ。
どうしてこいつはこんなにも不器用なんだろうか。
ただ俺はアキに笑って過ごしてほしいだけなのに…。
「…本当は今日、送ろうとしてたんだろ?」
咲希のこと…と言うと、アキは一瞬、驚いたような表情を浮かべ、すぐに顔を赤くした。
「諦めんなら咲希に告ってからにしろ。後悔するような時間の使い方をするな」
「……あぁ、そやな」
そう言って目を赤くしながら、アキは情けなそうに優しい笑みを浮かべた。