サヨナラのその日までそばにいさせて。
翌日、一般病棟の個室に移され、しばらく入院することになった。
「親父さんたちは?」
「帰った…って、まぁホテルにやけど」
「そうなんだ?俺ん家に泊まってもいいのに」
「これ以上、迷惑かけられんと思ってんねんやろ」
苦笑すると空良は肩をすくめた。
俺がこっちに戻りたいと我が儘を言ったのは、転校してくる一ヶ月前。
反対する両親を空良が説得してくれた。
「僕の家なら病院にも通えますし、万が一に備えても大丈夫です」と。
空良の説得と俺の必死なお願いに、両親は渋々承諾してくれた。
「…空良」
「ん?」
時間潰しに、と持って来てくれた雑誌にパラパラ〜と目を通していた空良は、見上げるように視線を向けた。
窓から見える真っ暗な外を見つめ、俺は言った。
「咲希、連れて来てくれへん?」