Three Sounds
「ヒカル、ギターは?」
横から、母親が問いかけてきた。
「忘れた。」
「全く。あ、じゃあ、ユキネちゃん、後はヒカルと。お母さん、ちょっと出かけて来るからね。」
そう言って母親は立ち上がった。
 「そりゃあ、ケンカになっちゃっても当然かも。」
ヒカルは30分も、スバルやアラシへの不満と、曲作りのいざこざを話した。というよりはぶちまけた。ユキネは、毎度のことなのか、なれた様子で小さくため息をつく。
「は、どういう意味だよ。お前まで、あいつらと同じなのか?」
「ううん、そういうわけじゃないけど。だってね、ヒカルちゃん、それは、三人で作っているんだよ、自分の趣味ばっかりおしつけちゃダメじゃない。」
「ほら、そうやって否定するだろう。」
「してないよ。私は、ヒカルちゃんがそういう曲、弾き語りしてるの見るの好きだし、格好いいと思うよ。でもさ、後の二人は違う音楽の楽しみがあるに決
まってるよ。」
「けど、曲は俺が作ることになってんだぜ。」
ユキネは少し考えてから、再度ゆっくり聞かせた。
「それじゃ、ヒカルちゃんだけの音になるじゃない。それじゃ、三人の音楽とは言わないよ。
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