ご主人様はお医者様


職場では、高木先生を極力避けた。


先生も何もなかったように態度を崩さない。


これでいいんだ。







ある日の夜勤・・・




「高木先生、最近また病院に寝泊りしてるよね?」




ユキ先輩は、点滴を詰めながらそういった。


先輩の視線の先には高木先生。


今日もナースステーションで、重症患者の心電図モニターとにらめっこ。


そして当直でも無いのにずっと院内にいるみたいだ。




「でもさ、婚約するらしいって噂知ってる!?」


「え、はぁ…」


「私はやだな!あんなのと結婚したら、ずっと放って置かれて寂しいだろうに」


「そんなこと……」




――そんなことないです。


なんて言えない。


私と生活していた時は、きちんと帰ってくれた。


一緒に夕食を食べて、


お風呂に入って、


同じベットで寝てたの――…。



やだ……、



思い出したくないのに……。




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