ご主人様はお医者様
“ピンポーン♪ピン・・・”
その時、ナースコールが鳴った。
「私、行って来ます!!」
私は、作業の手を止めてナースステーションを出た。
深夜2時――、
暗い病棟の廊下を懐中電灯で照らしながら、610号室まで来た。
高木先生の患者さんで、術後4日目。
経過は順調だけど、不眠の訴えが多い。
“コンコン・・・”
「失礼します。三沢さん、どうしました?」
「ああ、よかった。及川さん、どうも眠れなくてね…、薬をもらえないかね?」
「眠剤ですか…、あ、もしかしてお傷が痛みます?」
「いや、うーん」
「少し待ってもらえますか!?」
私はそう言って病室を出た。