ご主人様はお医者様
高木先生は荒木先生の横、私の向かい側に座り、私と香澄に軽く頭を下げる。
先生は店員さんを呼んで、烏龍茶を注文した。
「高木、呑まないのか?
まさかお前、仕事に戻るつもりかよ」
「ああ」
荒木先生はやれやれとでも言うように肩を竦めた。
「せっかく出世前祝いしてやろうと思ったのにしけてんな」
「出世前祝い?」
高木先生は怪訝そうに聞き返す。
「大学の医局に戻るんだろ?
噂の見合相手は森教授の娘か?」
私は高木先生の顔をチラリとみた。
「ああ、事実だ」
先生は表情を変えずにそう答えた。
「実はその話しを学会で聞いてさ、なんで話してくれなかったんだよ〜水臭いな。
本当に出世街道まっしぐらだな」
上機嫌な荒木先生は、次々に質問を浴びせる。
お見合いの感想、好みの女か、いつ婚約するのか、指輪はもう用意したのか…………。
私は、グラスを握り締める。
もう……、
聞いていられないよ――…。
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