ご主人様はお医者様
こうして……
高木先生のお見合いの話を聞かされていると、自分の気持ちに嫌でも気付かせれる。
私、高木先生のことが今でも好きだ。
諦めてなんかいない――…。
笑っておめでとうと言えたらどんなに良いだろう。
でも…、
そんなこと出来そうにないよ。
今日森先生は『高木先生は婚約の事を悩んでいる』そういっていた。
本当にそうなのかな?
全然分らない。
ただただ私は、この場にいることが苦しくて仕方ない。
――ガタン・・・
私はおもむろに立ち上がった。
「すみません、私帰ります!!」
コートとカバンを手に取り、先生達に頭を下げる。
香澄は驚いたように私を見上げている。
「小春?どうした」
「ゴメン、香澄。先に帰るね」
一万円札を香澄に手渡すと、逃げるようにお店を飛び出した。