ご主人様はお医者様
全員がただ唖然とする中・・・
彬はこう言った。
「では、俺は体調不良ですし、小春は夜勤明けですから帰らせていただきます」
「ええ、私もっ!?」
「そうだ、帰ろう」
動こうとしない――、
いや、動けない私をヒョイと抱き上げる。
彬は軽く会釈してクルリと向きを変えると、ゆっくりと歩き出した。
ナースステーション内は、歓声と拍手(それと……落胆の声)に包まれる。
「や、降ろしてくださいっ!!」
「ダメ。論文も完成したし、今日はこれから一緒に寝よう」
そう言いながら、顔を近づけてキスをねだる彬の頬を軽く抓った。
「もう!ここじゃダメです」
「ふーん、どこならいいの」
「マッ、マンションに帰ってからです!!」
マンションに帰ったら、私からいっぱいキスしてあげるからね。
でも、
エレベーターに乗り込んだとたん、
私を床に降ろして、
抱き寄せて、
甘いキスをする。
そんな彬が私は好きで仕方ない――…。