ご主人様はお医者様


その後すぐに、彬は私を苦しいくらいに抱きしめて「もう行かないと」そういった。


彬は仮眠室を出る間際に、振り返って私を見つめた。



「小春、寂しい思いをさせるのは分ってる。でも俺の考えは変わらない」



私が答えに詰まっていると、示し合わせたように彬のPHSが鳴る。



「じゃあ…な」



言葉と同時にドアが閉まる。


1人残された私は、駆けだした彬の足音が遠退いて行くのをベッドの上で聞いていた。






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