ご主人様はお医者様
「もしもしっ?彬っ」
――『……もしもし』
電話に出たのは彬じゃなかった。
女の人の声――…
一瞬、かける相手を間違えたのかと思った。
――でも、掛け間違えるはずない・・・
突然のことで何も考えられないけど、彬の携帯に女の人が出た……これは現実!!
「あ、あのっ…あなた誰?」
そう聞き返すのが精一杯で、携帯を握る手にじんわりと汗が滲む。
――『私?誰だかわからない?及川さん』
私を「及川さん」と呼ぶその声に聞き覚えがあった。
「……平賀…先生」
――『そうよ、正解』
平賀先生は、クスクスと笑った。