ご主人様はお医者様


――『身分も違い過ぎた――……年齢も』




カラオケボックスで沢木さんはそういっていた。

沢木さんの別れた恋人の話。

……その人って、つまり…………。




次の瞬間、バキッという鈍い音とともに彬の体が床に倒れこんだ。



「彬っ!!」



思わず駆け寄ると、唇が切れて血が流れ出ている。



「彬、大丈夫?」



私は彬の体を抱き起そうとした。でも、沢木さんは私を制止する。



「及川さん、そんな男をかばうの?」


「彬のこと悪く言わないで!!」


「……どうしてかばうのさ?

及川さんとも付き合ったまま、麗華に妊娠までさせて……最低な男だろ」



――「最低なのはどっちだ」



彬はゆっくりとカラダを起こし、白衣の裾で流れる血を拭きながら挑発するような口調で言った。



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