ご主人様はお医者様


えっ――!?


私は安堵よりも驚きの方が大きくて、目を見開いたまま彬を見た。


彬は分かっていたとでも言うように静かにうなずいた。



「……私も同じ気持ちだったのよ。

不安だったの……」



平賀先生は今にも泣きだしそうな声で言った。




「年も離れすぎてるし、隼人はもっと若い子がいいんじゃないかって思って。

ヤキモチ妬かせるつもりで高木君に近づいた。

そしたら、隼人は及川さんと仲良くなってしまって……私、後悔したの。

バカなことしたって。

もう後に引けなくて、こんな……嘘までついて。

……ごめんなさい」



平賀先生は私に向かって頭を下げた。


目の前にいるのは自信家で、プライドの高い平賀先生とは全く違う。


沢木さんの事が好きで、苦しんでる1人の女性だった。


ああ、私と同じだ――って思ったら怒りはいつの間にか消えてしまった。



< 287 / 304 >

この作品をシェア

pagetop