ご主人様はお医者様
高木先生!?
振り返らなくても、声の主が誰なのかくらい分かる。
「ハルは俺の事を心配してくれてるの?」
「だって、先生ずっと働き通しで……」
「せっかくの仮眠も誰かに取って代わられたしね?」
「あれはっ……」
頬を膨らませながらそう言った瞬間、いきなりフワリと抱きしめられる。
「考えてみれば、300万円分働いてもらう前に俺、死んだらつまらないしねぇ?」
先生はそう冗談まじりに言ってから、私の耳元でクスクスと笑った。
そんなに近くで話さないで……、
くすぐったいよ。
先生の腕の中で身をよじると、“逃がさない”とでも言うようにさらに力を込める。
「大丈夫、今夜は帰るよ……、オペが終わったらすぐに。
だから、夕飯作って風呂入れて待ってて」
「はい……」
私が素直に頷くと、先生はスルリと腕を解いた。