ご主人様はお医者様
病棟に着いて、
先生が真っ先に向かったのは、昨日の緊急オペの患者さんの所。
その姿を見つめながら、私はナースステーションへ入る。
「お疲れ様です。昨日の緊急の患者さんどうですか?」
「ああ、お疲れ。及川さんの担当だっけ?経過は順調、バイタル安定」
「そうですか、よかった」
よかった――。
先生がオペした患者さん、大丈夫だって!!
「どうしたの?やけにうれしそうだけど?」
「いえ、ただ心配だっただけです」
そこへ、先生が病室から戻ってくる。
「あの個室の患者受け持ちは及川さん?だよね」
「はい」
「今日から輸液の量減らすから。あと少しずつ離床図って」
「はいっ」
先生は、私の横に立って小声でこう囁いた。
「君の言った通り、ナースはちゃんと患者を看ていてくれているようだ。だから、今夜は早く帰るよ」
「じゃあ、おいしいご飯作って待ってます」
私がそう答えると、
みんなから見えない位置で、先生の小指と私の小指を絡めてキュッと握る。
指きり――…?
私が握り返すと、何もなかったようにスルリと指を解いて仕事に戻る先生。
じゃあ……、
今夜も腕によりを掛けた料理で先生の帰りを待ってますっ!!