ご主人様はお医者様


両手が塞がった私を壁に押し付けると、耳元で囁く。



「ちゃんとお出迎えできたご褒美をあげる」


「ご褒美?ですか」


「そう、ご褒美」



先生は私の顎を持ち上げて、甘いキスのご褒美をくれる。



その唇は首筋から、胸元へと降りてくる。



「だめ……です」


「どうして?」


「やっ……んっ」



私のささやかな抵抗は、先生の唇で塞がれてしまって。


もう……、


聞き入れてはもらえそうになかった――――。




“ドサッ・・・”




持たされたカバンも、ワイシャツも、全部床に落ちてしまって……、


拾い上げようとする私の手を掴んで、先生はバスルームへと向かう。


今夜はこの甘いご褒美を、私は受け入れるしかなさそうだ。


ううん、


受け入れたいと思ってしまったんだ――……。


だって、


抵抗する理由はどこにも見つからない。




「……ねえ?」


「……はい」





「焦げてる?」


「はいっ?」


「焦げ臭い!!」


「あーーーーっ、魚っ!!!!」



うそっ、

なんで、

どうして!?


魚焼いてるのすっかり忘れてた――――!!





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