ご主人様はお医者様
どうせどこかの社長だろうから、フルーツ盛りとか頼んでもらって、売り上げに協力してもらっちゃおう。
なんて考えながら席に向かった。
「失礼しマース、ハルでーす」
背後からワントーン高い声で挨拶し、ブランド物の細身のスーツを着た男の人の横に座ると、ふんわりと上品な香水香りがした。
ゆっくりと顔を見上げるとお互いの視線がぶつかって――……、
「……及川?」
その人は、目を見開いたまま私の名前を呟いた。