ご主人様はお医者様


食事が終わると、店を出て通を二人で歩いた。


スクランブル交差点で信号待ちをししながら、香澄は携帯のメールをチェックしている。



「荒木先生、まだ病院だってさーー。
小春、次どこ行く?カラオケでストレス発散かーそれとも……」





以前なら、こんなふうに色々なお店を梯子して、オールする事も珍しく無かった。




でも……、


今日は帰りたい。


先生の所へ――…。







「ゴメン、香澄……私帰るね」



「えっ!?本気?体調悪いの」


「ううん、そうじゃないけど……帰るね。じゃあまた明日」



香澄にそう告げると、私はクルリと背中を向けて駅へと走り出した。




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