ご主人様はお医者様




「ただいま帰りました。遅くなってすみません」



リビングに入ると先生はまだスーツ姿でソファーに座っていた。



「ああ、お帰り。俺も今帰ってきたところ」



振り返った先生は、いつもと変わらない笑顔だった。



よかった、さっきのは私の見間違い――…だったんだよね。



「ハル、映画楽しかった?」


「はいっ」


「そっか、よかったな」



先生は大きな手で私の頭をクシャクシャと撫でた。



「先生は?」


「俺?両親と帝都ホテルで食事」


「ええーーっ、いいなぁ高級ホテルなんて行った事ないです」


「ハハッ、じゃあ今度連れて行ってやろうか?」


「ほんとっ、うれしいです!!」


「じゃあ、指切り」



そういって先生はスッと小指を差し出した。


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