ご主人様はお医者様
ある日、勤務が終ってエレベータに乗り込んだ。
ドアが閉まる寸前駆け込んできたのは森先生。
乗っているのは私たち2人だけ……。
「お疲れ様、及川さん」
そういって森先生は人懐っこい笑顔を見せた。
「お疲れ様です」
私はそう言葉を返して俯いた。
森先生は、どうも苦手。
かわいい顔をしているけど、時折見せる何でも見透かしているようなあの目がどうも……。
「今日、夜は暇?」
「えっ?」
「ああ、僕ねもうすぐ外科のローテが終るからさお疲れ様会!!」
「はぁ、お疲れ様会……ですか」
「そう、19時に大通りのシェルターって言うバーに集合ね!!」
「ええっ、私はっ……」
私の答えを聞かないまま、森先生は医局のある2Fでエレベーターを降りてしまった。