ご主人様はお医者様
マンションに帰ると、お風呂を洗って、洗濯物をたたんだ。
それから、キッチンに立って野菜を切り、お肉に下味をつける。
「よしっ!ここまでやっておけば大丈夫だよねっ」
ラップをかけて冷蔵庫にしまう。
あまった時間で、よそ行きのワンピースに着替えてお化粧を直した。
出かける準備が整った私は、先生の部屋のクローゼットを開けた。
スーツとコートとワイシャツ数枚を取り出して、大き目の袋に入れようとした。
――コトッ・・・
多分コートのポケットから落ちたんだろう。
床に目をやると、小さな箱が転がっていた。
拾い上げると机の上に置いた。
なんだろう――そう思いながらも、私は急いで部屋を出た。