ご主人様はお医者様


先生は、何も言わずに私を見つめている。


いつからいたの!?


もしかして全部聞かれてたの!?


沈黙に絶えられなくなってゆっくりと口を開いた。



「せん……せっ、きゃっ」



先生は無言で私の腕を掴んでぐいぐいと引っ張っていく。



「あの、どこへ行くんですかっ!?」



私の質問には答えてくれない。



廊下を行きかう患者さんも、ナースも、医者も、



みんなが振り返って見てる。



「私、仕事がっ」



それでも先生は足を止めようとしない。


< 97 / 304 >

この作品をシェア

pagetop