田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
家もなにもそこにはなく

当然ながら家族の姿はない

逆に言えば…

遺体はその場所にはなかったのだ

焼けて熱くなった土地を掘り返してもみた

わずかばかりの家財道具の焼け残りがでてくるだけだ

初五郎はあらゆる人に話を聞いた

まともに話せる相手になかなか巡り合えないのだ

ようやく人の集まる場所を見つけ話を聞けた

「若い女と子供が二人…赤ん坊もいるはずです!誰か見ませんでしたか!」

「多分あの人でしょう…子供の怪我が重くて歩いて立山の病院へ向かうと言っておりましたが…」

立山…

まだ歩かなければならない

初五郎は諦めるわけにはいかなかった
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