田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
薄暗くなり始めた帰り道を急ぎ足で歩く

シイエは早く初五郎に話をしたかったのだ

それにまだ治安は安定していなかった

暗くなると女と赤ん坊では危険だ

前を見据え足を進めるシイエの視線の先にアメリカ兵が見えた

すれ違わなければ先に進めない

シイエは道の脇に義輝をかばうように身を縮めた

そのまま目を閉じてアメリカ兵が通り過ぎるのを待つ

足音はシイエの横で止まった

アメリカ兵に会うと何をされるかわからない

そんな噂は誰もが知っていた
< 124 / 202 >

この作品をシェア

pagetop