田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
花幸で宴席の支度が進んでいるその頃

眼鏡橋辺りでよろよろと力無く歩く一人の男の姿があった

服はボロボロでやせており顔は泥をかぶったように真っ黒である

戦後間もないこの時期にはそのような風貌の人は珍しくはなく誰も気にもとめない

男は花幸から少し離れた場所から花幸をじっと見ている

時折花幸の前まで行っては考えるような素振りをしてまた離れるという事を繰り返していた
< 132 / 202 >

この作品をシェア

pagetop