田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
しばらくして身なりを整えた番頭がヨッコと皆の前に現れた

奥様の前までいくと畳にあたまをこすりつけて言葉を絞り出す

「申し訳ありません!申し訳ありません!」

「番頭さん…生きててよかった…」

「ヨッコから赤ん坊の話は聞きました…皆さんでお祝いをしてくれてたと…本当にありがとうございます」

「そうね…あなたもがんばらなきゃね」

そこまで話したところで番頭は握っていた布を奥様に差し出す

「申し訳ありません…」

「なんです?」

「あの日…あの時確かに旦那様は自分のそばにおりました…でも…自分が目を覚ました時には居なかったのです…今までずっと探しておりました…旦那様が居た場所にこれが落ちておりました…どこをどう探しても旦那様は見つからないのです」

布きれは出かける時に奥様が着せた羽織りの焼け残りだった
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